哺乳動物は生まれた直後から口で母乳を吸い、歯が生えたら歯で食べ物を噛んで飲み込み成長します。生まれた直後から毎日使っている口の重要性をもっと考え、自分の口や歯のことをキチンと知りましょう

唇の異常

粘液嚢胞(ねんえきのうほう)

鼻の下にあり、上唇と下唇からなります。唇のシワと形は指紋と同じように人それぞれ違います。
この唇の中には口唇腺という唾液を出す機関があります。この唾液の出口が閉鎖されたり破損したりすると唾液が詰まり、粘液嚢胞というものができます。これは悪い病気ではありませんが、食事中に唇を噛んだりするとできやすいので注意してください。また、近くの歯がとがっていて粘膜を傷つけていることもあり、この場合は原因となる歯を削って治療をします。
粘液嚢胞は口の中の柔らかいところにできる嚢胞のうち最も多く40パーセント前後とされ、とくに20代の青少年に多く発生します。下唇に多く、舌や頬粘膜にもできることがあります。

口唇裂(こうしんれつ)

上唇は胎児期に左右の突起がくっついて一つの上唇になります。しかし、この左右の突起がうまくくっつかずに生まれてしまうと口唇裂という唇の形になります。
口唇裂で生まれる確率は500人に1人と言われていますが、現在は医療技術の進歩により2時間ほどの手術できれいに治ります。
また、口蓋のほうまで裂がある状態を唇顎口蓋裂といい、この場合は1歳くらいのときに再度手術を行い口蓋を塞ぎます。

上唇小帯異常(じょうしんしょうたいいじょう)

上顎の前歯の間にある帯のことで、約30パーセントの人は歯茎からついていますが、歯の間まで伸びていると、永久歯に生え変わるときに正中離開(せいちゅうりかい)といって前歯の間にすき間ができることがあります。自然につまることもありますが、大きく開いているようなら専門医に相談してください。
上唇小帯の異常があると上顎前歯部に虫歯が発生しやすいため注意が必要です。また上唇の運動障害、発音障害、上唇の変形がみられる場合は外科手術を行います。
出生直後や1歳半検診などで発見されることが多いようですが、お母さんが歯磨きをしてあげる際などにも注意して見つけることが可能です。

巨大唇(きょだいしん)

唇が異常に大きくなった状態で、生まれつきのものや発育異常によるものはまれで、血管腫、リンパ管腫、血管神経性浮腫、肉芽腫性口唇炎などにより大きくなることがあります。
ある日より突然、唇が大きくなったと感じたら、早めに専門医にかかることをおすすめします。

ヘルペス

ウィルスが原因で起こる口内炎で、単純疱疹と帯状疱疹ウィルスによるものがほとんどです。単純疱疹は水泡ができることで発症し、その水泡が破れてビランとなりカサブタを形成して治っていきます。帯状疱疹は、三叉神経(さんさしんけい)領域や肋間神経(ろっかんしんけい)領域にできることが多く、発熱や倦怠感とともに発疹部の灼熱感や神経痛のような痛みを伴うこともあります。
単純疱疹と同様の経過で3〜5週間で治りますが、色素の沈着や脱失、神経痛様疼痛が残ることもあります。
抗ガン剤や免疫抑制剤の使用時や全身状態が低下したときに起こりやすいようですが、早めに抗ウィルス剤を使うことで治りも早く後遺症も軽減できます。


舌の異常

舌ガン

口の中に発生するガンは、癌腫(上皮由来の悪性腫瘍)が約90パーセント、肉腫などが約10パーセントです。ガンのできる位置によって「舌ガン」とか「歯肉ガン」などと呼ばれ、口の中では舌ガンが最も多く約半数を占めます。
舌ガンは舌の縁のところにモワッとしたデキモノができるのが特徴です。舌の表面の小さなボツボツなどはもとからあるもので心配いりませんが、逆に舌がツルツルになった場合には他の病気も考えられますので専門医に相談してください。
高齢化や食生活の変化などから口の中のガンは年々増加しています。また、口腔内にガンが見つかると消化器系にもできている場合があります。ガンは早期発見で完治することも多いので、気になったら早めに来院して検査することをおすすめします。

舌痛症(ぜっつうしょう)

舌に痛みがある場合の総称ですが、一般的には舌にデキモノなどができていないのに痛みがあるときに使います。発作性の電撃痛の場合は三叉神経痛(さんさしんけいつう)や舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)のことが多いので検査を受けてください。舌の先からふちにかけてピリピリと痛むものには原因不明のものが多く、神経性のものや知覚過敏によるものも多いようです。
とくに他の症状がない場合は、痛み止めなどで痛みを軽減するか、うがい薬や軟膏を塗ることで軽減されることもあります。歯ブラシや舌ブラシで舌のブラッシングやマッサージをすることで痛みが軽減することもありますから試してみてください。

舌小帯異常(ぜつしょうたいいじょう)

舌小帯が短い場合を舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)と言います。「アカンベェ」をしたときに舌の先が逆ハート形になり、舌を前に出せなくなります。そのために発音障害が出ることがありますが、手術で改善されます。

ラヌーラ

舌の付け根や顎の下がが腫れて舌が押されているようになるものを言います。舌下腺や顎下腺の障害により生じるもので、これも粘液嚢胞と同じで、つばの出る出口が閉鎖されたまってしまった状態です。
若年者や女性に多く、切除することで縮小しますが再発しやすいので注意が必要です。

黒毛舌(こくもうぜつ)

舌全体が焦げ茶色から黒っぽくなり痛みはありません。多くは抗生物質を長く服用した歳に口の中で菌交代現象というものがおきて黒っぽくなるものです。タバコやコーヒーなどの着色飲料によっても黒くなりますが、その場合は外来色素の調整を行ないます。
うがい薬や口腔内の消毒や洗浄によって軽減されることもあります。

地図状舌(ちずじょうぜつ)

舌の表面に地図を描いたような白い模様ができます。日によって変化し、痛みがある場合とない場合があります。原因は不明ですが、うがいや口腔内の消毒で2週間前後で治ります。

ハンター舌炎

舌表面がツルツルになり、また赤みをおびて痛みを伴うこともあります。悪性貧血によって起こるもので、ビタミンB12の注射や口腔内の消毒を行ないます。舌がツルツルになっていると思ったら早めに医師の診断を受けてください。
プランマービンソン症候群やシェーグレン症候群などでツルツルになることもあります。

シェーグレン症候群

舌の表面がツルツルになり、目や口が乾いたり、耳の下のあたりが腫れぼったくなったり、関節リュウマチがでたりします。唾液や涙などの必要な分泌液が出にくくなる疾患です。耳下腺造影というX線写真を撮ったり血液検査をして診断しますがより正確に調べるためには唾液腺機能検査を受けることもあります。
いずれにしてもこのような症状のときは早めに診察を受けてください。

乳頭腫(にゅうとうしゅ)

舌や歯肉などにできる良性の腫瘍です。粘膜や皮膚の表面にできるもので悪性にはなりにくいのですが、大きくなって機能障害を起こすものや審美的に良くないものは治療が必要になります。小さいものは経過観察します。このほか、線維腫、血管腫、リンパ管腫、神経腫、骨腫、線種、筋腫など、腫瘍は口腔内のいろいろなところにみられます。

口内炎(こうないえん)

口腔粘膜にできる炎症を総称して言います。舌の先にポツッとできて痛みを伴うことが多いので、鏡を見なくても気付くことがあります。頬の粘膜や唇にもできます。
ビタミン不足や、ストレスや疲れがたまってできるとも言われています。義歯が粘膜を刺激してできる場合もあり、義歯性口内炎と言います。
口内炎には通常、ステロイド軟膏を塗ると治ります。

顎関節症(がくかんせつしょう)

鏡を見ながら口を開けて、3本の指をたてに並べて入れてみてください。ちゃんと入りますか?
また入れたときに顎がカクッと鳴ったりギリギリ音をたてたりしませんか?
顎が痛くて開きにくかったり、カクカクいったりするものを顎関節症と言います。
顎関節は身体の中で唯一、左右両側の関節が共同して動く特殊な関節で、噛み合わせをうまく調節しています。この調節がうまくいかなくなると、身体の様々な器官に悪い影響がでてきてしまうのです。
鏡を見て顎を動かしてみて「痛い」とか「動きにくい」と思ったら、専門医に相談してみてください。


歯の異常

親知らず

歯には子どものときに生える乳歯と6歳ごろから生え変わる永久歯があります。通常、乳歯は上下左右5本ずつ合計20本。永久歯は上下左右7本ずつの合計28本生えています。この他に上下左右に1本ずつ生えるのが親知らずです。
親知らずは17〜22歳くらいに生えてきます。昔はこれくらいの年齢で親が亡くなっていたので、子どものこの歯を見ることができなかったんですね。それで「親知らず」と言うのだそうです。
最近の人は顎が小さくなって、親知らずが生えない人もいます。また、生えても役に立たない、斜めや横に生えてしまって痛みがあるような場合は抜かなければならないこともあります。しかし、痛みがなく、炎症や化膿もなければ無理に抜くことはありません。ただ歯磨きなどがしにくいので虫歯になりやすく、注意が必要です。

歯の変色

黄ばんだ歯や黒ずんだ歯は、噛むことには支障ありませんが見た目が悪く感じられます。これらの歯は高いお金を出して白くしなくても保険で白くできることがあります。とくに前歯は基本的には保険がききますから、まずは歯科医にご相談ください。

虫歯

よく虫歯の検査で「Cの1」などと言われますが、これは虫歯、カリエス(caries)の頭文字「C」を用いたもので、これに数字をつけて虫歯の大きさを表します。

C1は虫歯がエナメル質にみられる場合で、歯の溝などに黒や褐色の点やスジに見えます。エナメル質には神経がありませんので痛みも感じません。この段階なら治療も簡単です。

C2は虫歯がエナメル質を越え、象牙質に及んだ状態です。表面の虫歯が小さく見えても、冷たいものや甘いもので痛みを感じるようになると、この象牙質に及んでいることが多く、エナメル質を削ると中に大きな虫歯の層がでてきたりします。完全に取り除かないと、さらにひどい状態に進行します。

C3は虫歯がもっと進んだ状態で、歯髄に細菌感染が起こって歯髄炎を起こしていきます。痛みもひどく、身体が温まるとズキズキします。冷たいものより温かいお茶などで痛みを感じ、とくに夜はひどく痛みます。歯が浮いたり歯肉も腫れたりします。進行すると最近は歯の根元に病巣を作ります。

C4虫歯がさらに進行し、歯はほとんど崩壊して根っこだけ残っているような状態になります。これを「残根」と言います。歯髄は腐って痛みも感じなくなりますが、炎症は進行して歯槽骨や歯根膜へ進み、歯槽骨炎、歯根膜炎、骨髄炎、顎骨周囲炎へと広がります。

食後の歯磨きなどで虫歯の予防をすることもたいせつですが、あまり強く磨くとエナメル質がすり減ってしまいます。歯磨きとともに、歯ぐきのマッサージで歯周病を予防しましょう。また、歯ごたえのある硬い物をよく噛んで(一口50回噛むつもりで)、食べるよう心がけてください。
80歳で20本の歯を残すこと、ぜひ目指したいですね。

歯周病

歯ぐきが腫れたり、膿が出て歯がぐらついたりする症状を歯周病と言います。ひどくなると歯が抜け落ちたりする恐ろしい病気です。歯周病は以下のような症状で進行します。

1. 歯肉(歯ぐき)が赤く腫れ上がり、歯を磨いたりリンゴを噛ったりすると出血します。
2. 歯周ポケットが広くなり、出血したり膿が出て口臭を感じることがあります。
3. ポケットでの炎症が慢性化し、歯根膜、歯槽骨が溶けてきます。口臭もあり、歯が浮いた感じになります。強く噛むと痛みを伴い、歯がぐらついてきます。
4. 歯槽骨がほとんど溶けてなくなり、歯の根元が露出し、ぐらつきもひどくなります。硬いものは食べられません。
歯周病は1本にとどまらず、口の中全体に広がって行きます。早めに治療をするとともに、日ごろの歯磨きやたんねんな歯肉マッサージなどで、予防も心がけましょう。

歯の喪失について

抜けてしまった歯の治療は、取り外し可能な入れ歯ばかりでなく、ブリッジ、インプラント(人口歯根)、自分の歯を口の中で移植する自家歯牙移植などさまざまな治療法があるため、専門医にご相談ください。

口というのは毎日お世話になっているのに、いざ考えてみると意外とよく分かっていないものです。
一日一回、歯磨きのついでにでも鏡を見て、ちょっと観察してみましょう。虫歯でもガンでも早期発見、早期治療を心がけ、生涯自分の歯で美味しく食事をしたいものですね。